ゼロダテ/駅前美術展 鷹巣会場「河哲商店」


鷹巣での初めての展示でしたが、たくさんのかたにご来場いただきました「ゼロダテ/駅前美術展」鷹巣会場。
秋晴れの空と、お越し頂いた方々の顔を思い出しながら、振り返ってご紹介します。


まずは・・メイン会場だった「河哲商店」さん。
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内陸線の鷹巣駅を降りるとほぼ正面でみなさまをお迎えします。

河哲商店はかつて、ガソリンスタンドやお肉屋さん、スーパー、倉庫などさまざまな商売を行っていた町の顔のような存在だったそうです。鷹巣エリア初の4階建て、屋上にはなんとビアガーデンもあったとか。
ずいぶんと粋な場所だったんだろうなあ、と往年の姿を感じずにはいられません。

10年シャッターの閉まっていた河哲商店をお借りして掃除をさせてもらった時も、設営の時もオーナーの河田さんは、様子を見がてら一緒に作業をして下さいました。
ゼロダテ/駅前美術展を見て回ると、作品とともに、建物とその建物が沢山の人を迎えていた頃の街の姿に会えますよ。



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空ツリー。鷹巣は双子のツリーです。

あの日の空と、今日の空。いっしょに眺めることができます。

▼河哲商店1階受付隣
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鷹ノ巣出身の高橋 沙綾さんの作品「どうでもいいこと展」。
日々のなにげない情景をイラストとテキストで表現しています。きっと見た人は「あ、わかる!」と思わずにはいられないでしょう。

高橋さんのコメント
「どうでもいいことはすぐに消えます。
それは、どうでもいいからです。
けれど、どうでもいいことこそ
だいじにとっておきたいことなのです。」


▼河哲商店1階 北側
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秋田市の澤田弦吾さん「flow」。

澤田さんの作品に寄せるコメント
「絶え間ないもの。この場所、この街、絶え間なく何かが続いていくために何ができるのか。そのことを考えて作りました」

天井から映像がスクリーンへと垂直に投影されて、人は足元に出来た光の窓を見下ろします。そのスクリーンは、スピーカーからの重厚な音で揺れている。物質的にも存在感のある映像作品。

その隣には・・
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森吉・根森田の織山英行さん「秋田内陸縦貫鉄道 冬のローカル線の旅」。
織山さんからのコメント
「2012年1月から3月にかけて撮影した冬の内陸線と沿線の行事を、24分に編集したものです。雪の中を走る列車の姿のほか、雨後中里のカンデッコ上げ、上桧木内の紙風船上げ、豪雪の比立内、阿仁合のキャンドルストリート、森吉山の樹氷などを盛り込み、内陸線沿線の冬のイメージビデオに仕上げました。」

織山さんは、元々お肉屋さんだったこの部屋のステンレスの壁をそのまま使って、映像を投影。時折、ステンレスに反射して、スクリーンでは出ないとってもきれいな色があらわれました。

ここの壁の掃除はじつはかなりな難物・・。手伝って下さった皆様、ありがとうございました。そのまま使って下さった織山さんにも感謝です。

▼河哲商店1階北側奥
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藤林 悠さん「LINE」
藤林さんからのコメント「2011年7月頃に制作した「LINE」という作品は、同年に起こった福島県における原子力発電所の事故により、放出された放射性物質の「ホットスポット」となった作家の居住地の状況から着想したものである。身体へのみえない影響通し、私とこの地域の人々は問題を共有していた。麻痺し続ける日々の中、そのことを忘れないために。」

作品と向かい合った一人一人が、3.11以降の世界の中で自分の身体と向かい合う時間を得たのではないかと思います。


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OPENdAN「オーペンカー」

会期中、公開制作しながら展示を変えたり、きりたんぽ祭り会場でパフォーマンスを実施したり、目が離せないチームでした。

▼河哲商店北側2階
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伊藤園子さん「ドクロ人間」
伊藤さんのコメント「『ドクロ人間』は、「孤独」をテーマに制作した作品である。2008年6月、「秋葉原連続通り魔事件」に衝撃を受け、この作品の制作を決意する。住居兼アトリエとして借りた茨城県古河市の一軒家で、自分の中に沸き起こる「孤独」と向き合いながら、アルバイトや講師の仕事の合間を縫って仕上げた。「孤独」を具現化しようとする試みの中から生まれた形であり、自分の分身とも言うべき存在である。」

「ドクロ人間」も、隣の部屋に展示された小作品も、河哲商店2階のスペースになじんで空間全体が伊藤さんの世界観に満たされていました。

伊藤さんのお隣の部屋には・・
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船橋陽馬さん「Untitled Landscapes -frozen-」
船橋さんのコメント「寒さは世界を一変させる。人間を拒絶するようなその世界に足を踏み入れ、かつてこの地で文化を築いた人間たちを思う。この凍り付いた世界で何を見、何を感じたのだろうか。その視線の先には何が存在したのだろうか。今私が感じるこの凍り付いた世界の美しさに同じ感動を持って、立ち止まることはあっただろうか。」
凍てついた美しい大地の静けさに、じっと耳を傾け佇んだ方も多かったのではないでしょうか。


▼河哲商店1階に戻り、中央ホール
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手前右 芝山昌也さん「Open Sculpture」
奥 カッレ・カタイラ「European Eyes on Japan/ Japan Today vol.13」

カッレのコメント「風景(ランドスケープ)は、文化的な構築物である。秋田で撮影した作品で、私は、経験として風景を見ること、個人的な空間の無限の可能性、写真の中で風景を見ている人たちが私たちに写真を彷徨いながら熟視することを提案しているという事実、ヨーロッパと日本という2つの観点から見出された文化的な構築物としての風景の定義をまとめて持ち込みたかったのである。」

写真を見ている自分と、写真の中で何かを見ている人との複数の視線が重なり合う作品。昨年、カッレが秋田に滞在して撮影した作品です。

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芝山さんのコメント「この彫刻は銀閣寺の向月台のフォルムに、植物デザインの絨毯を貼付けたものです。向月台は自然を見立てて、庭の中につくられた人工の造形物です。印象の異なるふたつの人工物を組み合せ、自然と人工の在り方をテーマにしています。」

安定した存在感に、植物デザインの絨毯というユーモアもありつつ、コンセプチュアルな立体作品。さすがです。


▼河哲商店のその先に進むと
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本城奈々さん「音楽で織り成すぼくらの未来」
本城さんのコメント「北秋田の中学生全6校を回り、夢や故郷への想いをテーマにライブ&ワークショップを開催しました。各学校でみんなに想いを綴ってもらい、それらをその場で歌詞にして1フレーズを作り、最終的にフレーズをつなげて1曲を仕上げました。私自身も今回抱いた想いを大切にし、これからも未来へ向かう子供達へエールを贈りたいと想います。」

壁には、ライブ&ワークショップの時に、中学生の皆さんに書いてもらったメッセージがびっしり。
市内の中学生一人一人の顔が見えてきます。

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展示を見にきてくれた中学生と本城さん。


▼河哲商店を一度通り抜けると、元ガソリンスタンドだったスペースがあります。
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佐藤友里恵さん「Painting for my MISSIONS」
「幼い頃から持ち続けてきたある強い想い(使命)。それを成し遂げる為に自分自身を捧げ、私の限りを尽くしていくつもりです。そして、それを行う上で、私の得意な「絵」はその為の大きな土台であり力です。目標までの道を絵に導き導かれていけるように、これからも頑張って取り組んでいきます。」

会期中毎日、公開制作を行い、来場者の方とお話をしながら、すこしずつ作品を仕上げていました。
色とりどりな作品からは、音楽も聞こえてきそう!


▼河哲商店南側の2階
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アクタ「空full(カラフル)」(小野崎真悠子、佐々木美樹、京さおり、藤本尚美、堀岡利江)
「秋田公立美術工芸短期大学内で結成された有志のアートグループ「アクタ」が空っぽな空間をカラフルな作品でいっぱいにしました。「アクタ」とはArt Creative Team Akita」という意味を込めてそれぞれの頭文字をとり名付けました」

5名のイメージがきらきらとちりばめられた空間は、暖かな空気に包まれていました。

▼河哲商店南側2階奥
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クリスタ・モルダー「MA(European Eyes on Japan/ Japan Today vol.13 )」
クリスタのコメント「日本を初めて訪れた写真家が、秋田での撮影を通して出会ったのは、「間」という概念だった。一般の家屋、角館の武家屋敷、小坂町にある日本最古の木造の芝居小屋、疎開先だった秋田県南に残された白井晟一の建築の数々。それらを訪ね歩き、五感で日本独特の「時間」や「空間」のとらえ方を丁寧に確かめていった。」

昨年、秋田を初めて訪れたクリスタが撮影した写真の展示です。
この部屋の壁に滲み出た柱の跡を見事に使った展示に、空間の完成度の高さを感じさせます。


会期中、河哲商店さんの会場にご来場いただいたのは、延べ703名。
様々な用途で使われていた部屋が隣り合わせに連なる河哲商店の空間そのものにも感嘆の声があがっていました。
昔の様子を知っているという街の方も多数お越しになり、懐かしそうに歩いていらっしゃいました。


写真:船橋 陽馬
テキスト:里村 真理





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